「山間の村は、どこも稲刈りの真っ最中」 |
稲の実った黄金色が、見事な季節である。平らな所はもとより、緩やかな傾斜は段々畑にして、いたるところで稲作が盛んである。「私が見るかぎり」という条件付であるが、村が山の中にあれば、住民の主食は、この米とトウモロコシのようである。
三日目のテント場は、昨日か、今日の午前中に稲刈りを終えたばかりの、水気の少ない畑の中である。稲のにおいが、まだかなり強く残っている。わたしのテントのすぐ隣で、家族そろって、稲の脱穀をしている。のどかな、一枚の、本物の油絵にもなりそうな風景である。
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昨日の夕方、おそくまで遊んでいた子ども達の何人かが、朝早くに、私と話がしたくて遊びにやってくる。コヤパニの村の子ども達である。どの子も、好奇心に富むその眼が美しい。 |
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「ポーターもキッチンスタッフも、歌が大好きである。」 |
いままで一緒になって、長いこと歌っていたキッチンスタッフの三人が、夕食の準備で立ち去った。終わるかなと思っていたらその後、十人のポーターだけで、一時間を越えて、歌い興じていた。荷物運びさえ終えればポーターは暇である。脱穀の終わったばかりの稲の上に、思い思いに、寝そべったり座ったりして、長い時間歌いあっていた。今日のところは、歌は二曲しか出てこないようである。誰かがちょっと口ずさむと、誰かがすぐそれに乗る。気がつくと、いつのまにか全員で、声を合わせているのである。
お互い仲がとてもよい。みんな底抜けに明るい。そして、誰もが、今の生活に満足して、生きている。少なくとも、そんな顔つきをしているように見える。そういえば、今回のトレッキング計画段階のとき、担当の方から頂いたものの中に、こんな一節があったのを思い出していた。
『ご存知のとおり、ネパールは世界の最貧国の一つですから、おしなべて国民は貧しい生活をしています。貧富の差も大きく豊かなのは一握りの人たちです。
しかし、貧しいとはいえ平和な国情と、多くの国民が山間部において自給自足に近い生活をしていますので、数字では表せないある種の幸福が存在することも事実です。在日ネパール大使も「貧しいが、幸福感が一杯の国」と言っておられます。
こんな住民との触れ合いもトレッキングの魅力の一つです。』
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アルガート・バザールの村へ行く途中で、百一歳になるというおばあさんにあう。よい記念になりそうなので、ゆっくり会話をしながら、八枚も写真をとらしてもらう。これはその中での私の自信作の一枚である。 |
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アルガート・バザールの村。ヒマラヤ山脈の中とはいえ、低地の村のいくつかは、身につけるもの、はきものにも裕福さが見える。ネパール人は赤色のものを好んで身につける。右の太い木は、となりにもう一本あって二本の対として植えられる。片方がバル、もう片方がディパルと呼ばれ、オス、メスを象徴させ、ネパール人は大事に守り育てる木である。 |
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アルケット・バザールの村では、どこでも稲刈りのまっさい中である。稲刈りを終えたばかりの田んぼの中にテントをはらしてもらう。手や足の傷を見せながら私に、ガウGhauを教えてくれた子ども達である。 |
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