裏銀座の稜線歩き

北アルプス   野口五郎岳   2924m
    のぐちごろうだけ




2003年8月10日〜12日

8月10日 多摩=大町=七倉=(タクシー)=高瀬ダム〜(ブナ立尾根)〜烏帽子小屋 烏帽子岳付近散策
8月11日 烏帽子小屋〜三ツ岳〜野口五郎小屋 野口五郎岳往復
8月12日 野口五郎小屋〜三ツ岳〜烏帽子岳〜(ブナ立尾根)〜高瀬ダム=(タクシー)=七倉=大町=多摩

本来なら8月8日の夜に多摩を出発して、4日間で雲ノ平から水晶岳へ登る計画でした。しかし、あいにくの台風の直撃のため計画を変更しました。9日の夜には台風は去って行ったので10日の早朝に多摩を出発して、3日間で裏銀座から水晶岳を目指す事にしました。


8月10日

朝4時半に多磨を出発し、大町を目指す。中央高速道は若干車が多いようだが渋滞は無く快調だ。諏訪湖SAで朝食をとり、豊科で中央高速を降りる。大町の手前で左に扇沢方面へ入り、大町ダムの手前で七倉への道へ入る。七倉ダムを越えて少し走ると七倉の駐車場に8時半に到着した。

早速支度をしてタクシーに乗り換える。ゲートが開くのは8時半だと思っていたが、6時半が正しいそうだ。駐車場は今朝入山した車で半分うまっていた。ゲートが開いた時は大変な混雑だったようだ。ゲートの手前で山行計画書を提出し、トンネルに入る。15分程で高瀬ダムに到着しタクシーを降りる。



高瀬ダムからブナ立尾根を眺める。


湯俣側へ少し戻ってトイレを済ませ、出発する。ダムの上を渡り、トンネルに入る。トンネルを出るとすぐに吊橋があり、不動沢を渡る。白い砂礫の上を左に行くと無人のキャンプ場があり、さらに先へ行く。濁沢には橋がかかっており、これを渡って右に行くとブナタテ尾根の登山口に到着した。



高瀬ダムを渡り、トンネルで不動沢に出る。




吊橋で不動沢を渡る。




ここからブナ立尾根の大登りが始まる。


12番の番号が振られた登山口の脇の沢で顔を洗い、これから始まる長い登りを前に一休みする。濁沢の滝へ向かって緩い登りを行くが、すぐに左の急斜面に取り付く。工事現場のような味気無い鉄パイプの階段で、垂直に近い急斜面を越える。相変わらず樹林の急斜面の登りが続き、ようやく岩に赤字で11と書かれた場所に着く。

右手に沢の音が聞こえるが、樹林が濃く沢を見ることはできない。樹林の中を、ほぼ濁沢沿いに急登が続く。急な場所では一歩一歩が大きいので荷が重い時にはこたえる。相変わらず急登が続くが、登りがしだいに尾根状になってきた。樹林が切れ、稜線が見える場所に着いた。ここで一休みする。濁沢の崩壊が正面に見え、登山道も崩壊でえぐられている。左に巻道がつけられており、少し水平な道を行く。



樹林から開放され崩壊地の横を歩く。




南沢岳はガスの中。


次の急斜面はお花畑になっており楽しみながら登れる。しかしそれもつかの間で、再び味気無い樹林の急登が続く。再び右手から崩壊地が上がって来た。4番は広い休憩場になっており、ここでゆっくり休む。



ブナ立4番の休み場で休憩。


さらに登って行くと1番に着いた。烏帽子小屋まであと20分程だが、きれいなお花畑なのでしばらく休んで行く事にする。このあたりが森林限界なのだろうか、明るくて気持ちの良い場所だ。少し霧が晴れて、三ツ岳が見えた。



ブナ立1番のお花畑。




三ツ岳を望む。


いったん左に少し下り、涸れた沢沿いに登って行く。しばらく登って行くと、突然正面にニセ烏帽子が現れた。稜線に到着した。ここにはウサギギクが沢山咲いている小さなお花畑が有り心が和む。



眼前にニセ烏帽子岳が現れた。




ウサギギクのお出迎え。


樹林の中を少し下ると烏帽子小屋に着いた。目の前に赤牛岳が聳えている。早速小屋でテントの申し込みを済ませ、テント場へ行く。沢状の所に作られたテント場で、すでにかなり混んでいた。あまり平坦で良い場所は無いようだったが、池の手前の高台に素晴らしい場所が空いていた。



烏帽子小屋のテント場にテントを張る。




テント場から眺める三ツ岳。


テントを張り、水と行動食を持って烏帽子岳へ向かう。小屋の前を通り、樹林を抜けると砂礫の斜面になる。少し行くと花崗岩の脇を通り、コマクサの咲く斜面に出る。



烏帽子岳へ向けて散策する。




ニセ烏帽子岳手前のコマクサ。


ニセ烏帽子の頂上に着くと尖った烏帽子岳が眼前に見える。コルまで下ってみたが、時間的に登れそうにないので、ニセ烏帽子に引き返し、しばらく周囲の山々を眺めて小屋に戻った。



烏帽子岳をバックに。




ニセ烏帽子岳から三ツ岳を望む。


小屋で水を買い、テントに戻り夕食の支度をする。風もなく、静かで快適なテントサイトだ。

8月11日

唐沢岳の左に朝焼けを見ながら朝食の支度をする。昨夜は静かで良く寝られた。雲がだんだん濃くなってゆくのが気になったが、出発するときにはとうとう小雨が降り出した。朝からカッパを着て出発する。



カッパを着けて出発。


テント場から少し下り、緩やかな登りが始まる。小さな岩峰を越えるとしばらく岩がゴロゴロした登りになる。さらに登り、砂礫帯になるとコマクサガ見られる。少し広くなった所でリュックをおろして一休みする。目の前の三ツ岳が大きい。



小さな岩峰を越える。


しばらくコマクサを眺めながらの緩い登りが続くが、三ツ岳に近づくに連れてしだいに急な登りになる。小さなお花畑を越えると三ツ岳の頂上の標識に着いた。実際の三ツ岳の頂上はもっと先にあり、縦走路は右側を巻いている。



三ツ岳の標識があるが、三ツ岳はもっと先に。


前方に小高い三ツ岳の山頂が見えるが右を巻いて行く。しばらくトラバースぎみの緩い下りが続き鞍部に降り立つ。ここで左のトラバースルートと真っすぐの稜線ルートに別れるが、トラバースルートは通行止めになっていた。

鞍部で少し休んだ後、一登りで稜線に立つ。カッパを着ていても風が有ると寒いくらいだ。しばらく稜線の緩い登り下りを繰り返す。視界は悪くは無いが、遠望がきかないのが残念である。コマクサの咲く稜線を、いくつかの小さなピークを越えながら歩いて行くと、しだいに視界が悪くなってきた。



裏銀座の縦走路を行く。




コマクサを眺めながら歩く。


もういいかげんに着いてもいいのではと思うころ、正面の山かげに野口五郎小屋の青い屋根が見えた。小屋の横に「テント場は強風のため危険」と書かれており、不安を覚える。

小屋でテントの申し込みをしてテント場へ下る。小さなカール状の所に、棚田のようにテント場が作られている。水捌けの良い所だ。既に2張り張って有ったが、良さそうな場所を選んでテントを張った。

まだ夕食には早いので、少し休んだ後、野口五郎岳へ向かった。20分ほどで頂上に着いたが、あまり視界は良くない。それでも少し雲がかかった水晶岳を眺めることができた。一度テントに戻り、夕食を済ませた後、再び稜線に出てみると雲が無くなり素晴らしい眺めが広がっていた。薬師岳から立山への稜線や唐沢岳から燕岳の稜線を眺める事ができた。



野口五郎岳を目指す。




野口五郎岳の山頂付近。




真砂岳への稜線。




野口五郎岳の頂上にて。




水晶岳が姿を現した。




三ツ岳方面と立山、剣岳。




奥に鷲羽岳が見える。




水晶岳の稜線。


7時に寝たが、9時過ぎにテントが揺れる音で目を覚ました。強い風が吹き、テントがバタバタと揺れている。風の息が短い周期で繰り返されるので寝たとたんに起こされ、とても寝ていられない。

8月12日

時々テントのポールが風に押されて顔に当たる。遠くでゴーと風の音が鳴り、その直後にバタバタと大きな音でテントが揺れる。小屋に避難する程ではないが、とてもゆっくり寝ていられる状況ではない。寝れない夜を過ごし、予定通り3時に起床した。

火を起こすのは危険なので、朝食は取らずに出発の準備を始める。パッキングを済ませ、テントの中で雨具を着け靴を履く。テントの四隅にリュックを置いて、一斉に外に出る。フライを外し、ポールを外して、まず一安心。なかなか手際良くできた。リュックを出し、テントを丸めて抱え小屋に向かう。テント場は風の通り道になっているようで、小屋まで来ると風は弱まる。我慢していたトイレを済ませ、小屋の軒下でテントをたたみ終わり一息ついた。

まだ外は暗いので小屋の中へ入れてもらう。入口の土間で朝食代わりの行動食を食べ、明るくなるのを待つ。宿泊客も起きてきて、だんだん賑やかになってきた。今日は真砂岳から竹村新道経由で湯俣へ下る計画だったが、天気が悪いので安全のため、昨日歩いた烏帽子岳からの道を引き返す事にする。

5時ごろ、明るくなってきたので小屋を出発する。稜線に出てもテント場程の風は吹いていないので一安心する。ある程度の西風と雨だが、視界は確保されており、安心して歩ける。時々、強風でバランスを崩しながらも、風に耐えている高山植物を愛でながら、慎重に歩く。昨日歩いたばかりの道なので、安心して歩く事ができる。三ツ岳手前の鞍部で雷鳥を見る事ができた。

三ツ岳を下って行くと、雲が切れ、前方に烏帽子岳と烏帽子小屋を見る事ができた。登って来る人は少ないが、人とすれ違うようになった。風に耐えるコマクサを眺めながら下り、テント場を登ると烏帽子小屋に到着する。良い休み場が無かったので3時間も歩いてしまった。

雨を避け、小屋の中で休憩する。これからブナタテ尾根の下りになるので、残り少ない行動食を食べてゆっくり休む。小屋のテレビは晴れた甲子園の高校野球をやっていた。

小屋の左の道を登り、ウサギギクのお花畑を通り過ぎると、長い下りが始まる。1番のお花畑にはすぐに着いた。ここからは単調な樹林の急な下りが続く。途中で雨が止んだので雨具を脱ぎ身軽になる。4回ほど休んで急斜面の鉄パイプの階段を下り、登山口に降り立つ。沢で顔を洗い、喉を潤し、リフレッシュする。少し暑くなってきたが、もう一息だ。濁沢の橋を渡り、不動沢の吊橋を渡り、トンネルを抜けると、高瀬ダムに到着した。



濁沢に到着。唐沢岳を見上げる。




濁沢の橋を渡り山行を終える。


ダムは東京電力の見学バスで賑わっている。我々は客待ちのタクシーに乗り、七倉へ戻る。七倉で車に乗り換え、高瀬館の温泉で汗を流すと、心地良い疲労感と楽しい山の思い出が残る。池田の道の駅で昼食を食べ、温かいコーヒーを飲む。豊科の手前でスイカを買ってみるが今年のスイカは甘くない。

ブナ立尾根は急で長い登りが続くのでゆっくり登ろう。下部は少ないが、登るにつれて花も見られ、時々樹間から高瀬ダム人工湖の湖面を見る事もできる。単調な登りなので自分で変化を見つけて歩かないと苦しい。稜線はコマクサを始めとしたお花畑が続く。狭い山道だがすれ違う時にも、できるだけ道を外さずお花畑を守る姿勢で歩きたい。

8月10日 標高 到着 出発
多摩 4:22
七倉 1065 8:20 8:31
高瀬ダム 1270 8:43 9:17
ブナ立尾根取付 1330 9:44 9:54
ブナ立10番 1560 10:38 10:49
ブナ立7番 1800 11:38 11:53
ブナ立5.5番 2000 12:41 12:58
ブナ立4番 2180 13:48 14:04
ブナ立2.5番 2360 14:50 15:04
ブナ立1番 2480 15:36 15:52
烏帽子小屋 2520 16:19
8月11日 標高 到着 出発
烏帽子小屋 2520 6:50
三ツ岳手前稜線 2640 7:32 7:47
三ツ岳手前ピーク 2765 8:18 8:24
鞍部 2780 8:54 9:04
稜線 2760 10:00 10:15
野口五郎小屋 2870 11:29
8月12日 標高 到着 出発
野口五郎小屋 2870 5:00
烏帽子小屋 2520 8:15 9:00
ブナ立3.5番 2270 9:49 9:57
ブナ立5.5番 2000 10:52 11:13
ブナ立8番 1730 11:58 12:09
ブナ立11番 1445 12:56 13:04
ブナ立尾根取付 1330 13:20 13:30
高瀬ダム 1270 13:55 14:00
七倉 1065 14:12 14:24
高瀬館 960 14:40 15:18
多摩 20:20
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