残雪と水芭蕉の山

尾瀬 燧ヶ岳   2356m
ひうちがたけ




2003年6月6日〜8日

6日 多摩=田島
7日 田島=御池〜燧ヶ岳(柴安ー)〜赤ナグレ沢
8日 赤ナグレ沢〜見晴〜沼尻〜沼山峠=御池=多摩

一味違う尾瀬を求めて、残雪と水芭蕉の燧ヶ岳に登りました。頂上付近で思いがけず雷とヒョウに遭遇し、沢の中でビバークする事になってしまいましたが、楽しい思い出でになりました。


6月6日

夜9時過ぎに多摩を出発し、中央高速、首都高、東北道と渋滞も無く快適に走る。羽生パーキングで一休みした後、西那須野塩原で東北道を降りる。400号線を走り、塩原温泉を過ぎた所のコンビニで明日の朝食を買い込み、夜道をさらに進む。121号線に入り、山王トンネルを越え、1時前に会津高原駅手前の「道の駅田島」に到着した。早速、車の少ない場所にテントを張り、寝る。しかし、その後大型車が来てうるさくなり、あまり良い場所ではなかったようだ。

6月7日

少し寝不足だが、6時に起床し洗面を済ませ6時半に御池へ向けて出発する。檜枝岐を過ぎ、七入の駐車場を右に見る。観光バスが沢山停っているのが見えた。駐車場の入り口に係の人がいて、御池方面へ進入OKの指示があり直進する。ツヅラ折れの道を登り、7時45分に御池の駐車場に到着した。まだ空きはあるがきわどいタイミングだった。朝食とトイレを済ませ、身支度をして9時前に出発した。



御池の駐車場から出発。


駐車場の入り口の反対側から燧裏街道方面へ向かう。すぐに分岐が有り、左へ燧ヶ岳へと向かう。所々に咲く水芭蕉の花を見ながらしばらく雪解けの泥道を登る。やがて沢筋を登るようになるが、傾斜がきつくなるにつれて雪が出てくる。分断された雪渓のようになりとても歩き辛い。急登が終わり広沢田代の手前でルートを失い一休みした。



水芭蕉の歓迎を受ける。




残雪の登山道を登る。




急登が続く。




道端のショウジョウバカマ。


少し下ると木道があり、広沢田代に到着。しばらくのどかな木道歩きが続き、再び急登が始まった。調子に乗って夏道を外して雪渓を登って行ったら、手ごわい笹薮にてこずってしまう結果になった。この藪こぎで体力を消耗してしまった。次の熊沢田代までひと登りのつもりが意外と時間がかかり、途中で一休みした。



広沢田代に到着。


ようやく熊沢田代の下に到着した。下の湿原を横切り、小さな突起を越えて下ると熊沢田代だ。ここで下山してくる人に出会う。人の少ない静かなルートだ。しかし、雨がパラつき、遠くで雷鳴がした。湿原から少し登った樹林の中で雨具を着け、休みながらしばらく様子を伺うことにする。



広沢田代と御池を見下ろす。後方は会津駒ヶ岳。




熊沢田代下部から見上げる燧ヶ岳。




のんびりと花を眺めながら熊沢田代を歩く。




残雪の残る燧ヶ岳。


まだ引き返す程の状況では無い。しだいに雷が遠のいてゆくので様子を伺いながら雪の斜面をゆっくり登る。やがて左に斜上するようになり、樹林の赤ペンキを頼りに登る。いつの間にか雷の音は無くなり雨もあがっていた。



雪原の登りが始まる。


樹林が切れると長い雪渓の登りになる。ここでピッケルを出し、一歩一歩キックステップで慎重に登る。雨も上がり薄日がさすようになり暑い。雪渓の上部で左に抜ける。ここから雪渓を3つトラバースする。短いが緊張させられる所だ。後は石がゴロゴロする夏道を登り、重なった岩を越えると爼ーに到着した。



見上げる雪渓は長い。




熊沢田代を眼下に雪渓を登る。




俎ーの頂上から見おろす尾瀬沼。




俎ーの頂上に到着。




俎ーから柴安ーを望む。


頂上でのんびりと尾瀬沼や尾瀬ヶ原を眺めていると、再び雷の音が聞こえてきた。近づいて来そうな予感がしたので急いで柴安ーへ向かう。柴安ーの直下は短いが急な雪壁になっていて少してこずったが、頂上で写真を撮り、急いで見晴へ向けて下る。



柴安ー頂上直下の雪壁を登る。




柴安ーの頂上にて。


尾瀬ヶ原を眼下に急な道を下る。日当たりが良いので残雪は無く、楽に下れるが遠くから聞こえる雷鳴が不気味だ。温泉小屋道との分岐で少し休み、見晴新道を下る。赤ナグレ沢の雪渓の上に降り立ち、アイゼンハーネスを着ける。この頃から雷鳴が近づき激しくなってきた。下り始めるとヒョウが降り始めた。いよいよ雷がやって来たようだ。沢の中は比較的安全なので黙々と下るが、時折聞こえる雷鳴は不気味だ。所々雪渓の雪が消えて夏道が出ている。岩がゴロゴロする道をアイゼンで歩くのは疲れる。



柴安ー頂上直下の下り。


相変わらずヒョウが降り、雷鳴が止まらない。尾瀬ヶ原は霧で覆われてしまった。その尾瀬ヶ原へ向けて稲妻が光っている。テントを張れそうな小さな台地で一休みして様子を見たが、雷が去る気配は無い。ここは幕営禁止ではあるが、尾瀬ヶ原へ下るのは危険と判断し、やむを得ずここにビバークする事に決めた。テントを張り、食事をしている間も雷は鳴り続けていた。

6月8日

朝、4時に起きる。夜中に雨が降り風も出たが、今朝は良い天気だ。朝食は取らずにテントを撤収して出発する。アイゼンを着けてストックで下る。日当たりが悪いせいか昨日のように雪渓が切れている所も無く、快適に下る。1時間程下り、雪が少なくなった所でアイゼンを外し、行動食で朝食にする。

この時間になると登って来るパーティーに出会うようになる。沢の斜度は緩くなり、雪は消え、どろどろの道になってきた。新緑の森と可憐な花を見ながらゆっくり歩く。

見晴から沼尻への道に出ると、突然人が増え、混雑してくる。分岐で一休みして、左に沼尻を目指して歩く。ほぼ平坦な道だが、沼尻へ向けて少しずつ登っている。新緑の森に囲まれ、気持ち良く歩く。1時間ほど木道を歩いて、小さな沢との出合で休み、顔を洗う。



沼尻への遊歩道にて。


しばらく行くと白砂峠への登りが始まる。ゆっくり登って行くとしだいに雪が出て来た。白砂峠から雪道を少し下り白砂田代に到着する。もう沼尻まで一投足だ。



白砂田代にて。


賑わう沼尻でコーヒーを沸かし、燧ヶ岳を眺めながら行動食を食べ、1時間もくつろいでしまった。昨日の雷がウソのような穏やかな天気である。

尾瀬沼北側の道は、樹林と湿原が交互に現れ、左の燧ヶ岳と右の尾瀬沼に囲まれた変化のある道だ。右手に長蔵小屋が見えるようになると尾瀬沼の東端に到着する。三叉路のベンチで一休みするが、すごい人波だ。



尾瀬沼を右に見て歩く。




三叉路から燧ヶ岳を望む。


沼山峠へ向けて木道を一列に歩く。左手に燧ヶ岳が望めるが、人が多くてのんびりと眺めているわけにはいかない。湿原が終わると緩やかな登りが始まる。



左手に燧ヶ岳を見上げて歩く。


木道がよく整備されているので歩きやすい。沼山峠の標識を左に見て、さらに少し登ると下りになる。樹林の中をしばらく下り沼山峠のバス停に着いた。御池へのバスは出てしまったが、すぐに次のバスに乗り20分程で御池に着いた。檜枝岐の駒の湯で汗を流し、舘岩村の金丸食堂で定食を食べゆっくりしていたら4時半になっていた。西那須野までは車の流れは良く、心配した東北道の渋滞もさほどでなく順調に9時過ぎに多摩に到着した。

御池からの燧ヶ岳はなかなか手強いが、変化があって楽しい山行ができる。頂上直下の沢(雪渓)の通過が、登りも下りもポイントになる。ルートを失わないように沢から抜け出すポイントをうまく見つける事。柴安ー直下の雪壁は短いが急なので、雪が硬い場合は固定ザイルを使用した方がよい。

6月7日 標高 到着 出発
御池 1515 7:44 8:42
広沢田代 1730 10:00 10:18
熊沢田代下 1865 11:18 11:30
熊沢田代上 2035 12:27 13:03
俎ー 2205 14:50 15:00
柴安ー 2356 15:42
分岐 2270 16:10 16:16
赤ナグレ沢上部 2020 17:12
6月8日 標高 到着 出発
赤ナグレ沢上部 2020 5:28
赤ナグレ沢下部 1605 6:42 7:00
見晴分岐 1475 7:48 7:55
ダンゴヤ沢 1565 8:37 8:51
白砂田代 1654 9:40
沼尻 1660 10:00 11:01
三叉路 1665 11:49 12:01
沼山峠バス停 1705 12:58 13:12