北アルプス
蝶ヶ岳
2677m
ちょうがたけ
2001年8月5日〜8月7日
上高地の東北に位置し梓川を挟んで穂高岳と対峙する
上高地〜徳沢〜横尾〜蝶ヶ岳〜常念岳手前〜蝶ヶ岳〜徳沢〜上高地
今年の夏休みは、前半に北アルプス、後半に南アルプスへ行くことにしました。北アルプスはテントを持って妻と蝶ヶ岳に登りました。蝶ヶ岳は穂高の展望台と言われており、槍穂高の展望を満喫してきました。
朝、5時前に原村の家を出発し、上高地を目指す。茅野で中央高速に乗り、松本で降りる道は空いており、6時過ぎには沢渡に着いた。駐車場に車を止め、同時に着いた2人と一緒にタクシーで上高地へ向かった。2週間ぶりの上高地である。今日は天気が良く、岳沢を見ると、西穂高岳、奥穂高岳、前穂高岳、明神岳と稜線を一望できる。河童橋を過ぎ、時々左手上空に望まれる明神岳の写真を撮りながら歩くと明神に着いた。
上高地から岳沢を望む。
明神で一休みした後、広い平坦な道を横尾へ向けて歩く。左の山は明神岳から前穂高岳に変ってゆく。徳沢を過ぎ、屏風岩が見えるようになるとやっと横尾に着き3時間の平坦道から解放される。横尾の大橋のたもとのベンチで一休みしてここからの登りに備える。
梓川の川岸から前穂高をバックに。
横尾から涸沢への橋は渡らず、槍ヶ岳方面へ進む。すぐに蝶ヶ岳への分岐が有り、ここを右に蝶ヶ岳方面へ向かう。
左は槍ヶ岳へ、右は蝶ヶ岳へ。
道が平坦なのはわずかで、すぐに急登になる。蝶ヶ岳までただひたすら登るだけの道が続く。ふと振り向くと樹間に槍ヶ岳を望むことができた。
槍ヶ岳が見えた。
1時間ほど登ると、今朝横尾から蝶ヶ岳をピストンしてきたグループとすれ違い、一本立てる。さらに登りは続き、再び槍ヶ岳が見える場所に着いた。ここでしばらく槍ヶ岳を眺めることにする。急登が続くが、一カ所ピーク状の所が有り、そこから傾斜は若干緩くなる。長男から借りたザックが体に合わず、上半身だけ辛い状態になり、「いいかげん稜線に出ろよ」と言いたくなるがなかなか稜線にたどり着かな。適当な所で一本立てる。しだいに樹林が低くなり森林限界に近い事が感じられる。ようやく樹間から稜線が見えほっとした。
稜線はもうすぐだ。
やっと稜線に着いた。しばし目の前に広がる雄大な槍穂高を眺め一息ついた。先々週登りそこなった前穂高岳が挑発しているように感じる。他の山々は何となく懐かしい感じだ。
左から前穂高岳、奥穂高岳、涸沢岳、北穂高岳。
南岳から槍ヶ岳、北鎌尾根の稜線。右手前は西岳。
槍ヶ岳をバックに。
蝶ヶ岳から常念岳への稜線の縦走路を何人かが歩いて行った。そろそろ我々も出発の時間だ。槍ヶ岳を背に蝶ヶ岳へ向かうことにする。
蝶ヶ岳へ向けて。
蝶ヶ岳の小屋までは軽い登下降が続く。しかし、既に稜線に着いたと感じている身にはやや辛い。小屋手前の瞑想の丘にある方位盤の所で一休みして再び槍穂高を眺める。
蝶ヶ岳の瞑想の丘にて。
幕場は案外広いが、既に十数張り張ってある。場所を確保してから小屋へ行き二日分の料金2千円を支払う。テントを張った後、小屋で水を買った。ここはポンプでの吸い上げなので1リットル150円と少し安い。7リットル買った。ついでに生ビールも買い、小屋の前の小高い場所で正子と槍穂高を眺めながら飲んだ。常念岳にかかっていた雲がしだいに切れ、常念岳が姿を現した。こちらから見ると意外に急峻な山に見える。
常念岳をバックに乾杯。
テントに戻り、夕食のカレーライスを作り食べる。レトルトのごはんは手軽だが、重い上に直火ではうまく調理できない事がわかった。水の少ない所では辛いが、お湯で温めるしかないようだ。夕食後、幕場の裏の蝶ヶ岳の頂上へ行き、夕日を眺めた。夕日は北穂高岳と南岳の間の大キレットに沈んでゆき、穂高の山々は黒いシルエットになっていった。
穂高のキレットに沈む夕日。
7時前に寝るが、深夜12時ごろに近くのテントの話声で目が覚める。今頃出発するのだろうか少し静かにしてほしいものだ。私はシュラフカバーなので、ある程度の寒さは覚悟していたが、今晩は本当に寒い。先ほどの話し声の中で、「気温が5度だ」と言っていたが、なるほどテントの中も10度まで下がっている。あまり寝付けず朝まで震えていた。
今朝も良い天気だ。シュラフで寝ていた正子も寒かったらしくしきりに文句を言っていた。とりあえず日の出を見に、蝶ヶ岳の頂上へ行く。日の出は月並みだが、日が上がるにつれて赤く輝く槍穂高の山々が素晴らしい。やがて、前穂高の裾に蝶ヶ岳の影が映った。
簡単な朝食を済ませ、水と食料と雨具を持って常念岳へ向かった。今日は常念岳を登るのが目的ではなく、槍穂高を眺めながらのハイキングが目的なので気が楽だ。振り返ると雲の中、乗鞍岳の左奥に木曽の御嶽山が見えた。
御岳山(左)が見えた。右は乗鞍岳。
瞑想の丘の方位盤の所で、再び槍穂高の山々を眺める。いくら見ても飽きない。後ろから来た子供連れの人に写真を撮ってもらった。
朝の穂高をバックに。
老夫婦のパーティーと子供連れの若い元気なお父さんのパーティーと我々の3パーティーが前後しながら常念岳へ向かう状態になった。昨日登ってきた横尾への道の分岐を過ぎ蝶槍へ向かう。槍穂高を左に眺めながらの稜線歩きは豪快だ。途中、雷鳥のファミリーに出会いほのぼのとする。蝶槍手前の岩の上からは黒い鳥がにらみをきかせていた。
蝶槍への登り。左は常念岳。
岩の上からにらむ鳥。
蝶槍からは急な岩稜の下りがある。少し下ると左から巻道が合わさり、やがて樹林の中の下りになる。蝶ヶ岳は森林限界ギリギリの高さなので、少し下ると樹林帯に入ってしまい、穂高の山々は見えなくなってしまった。蝶槍からコルに降り立つと、今度はお花畑が始まり、目を和ませてくれる。お花畑はピークまで東側の斜面に広がっている。
2592mピークのお花畑。
再び下りになり、下り切ったあたりで樹林帯から解放された。今度は砂礫の斜面の登りである。すぐに登りきり、再び槍穂高の眺めに再会する。そして目の前に常念岳が圧倒するように聳えている。
2512mピークで常念岳をバックに。
しばらく休んでから蝶ヶ岳へ戻ることにしたが、正子が例の老夫婦の奥さんに励まされたため、常念岳へ行けるだけ行く事になった。行きは良いが、問題は帰りの下りである。まず一段下ってから常念岳の登りが始まる。登ってみるとたいしたことは無いが、所々岩っぽく、急な登りもある。
常念岳の登り。
1時間程登り、頂上まであと1時間の所まで来たが、下りはさらに時間がかかるので引き返す事にした。先ほどのピークまで戻りお湯を沸かし昼食にする。とても見晴らしの良い所だが左の安曇野側からガスが湧いてきた。稜線上にも雲がかかるようになり、急いで蝶ヶ岳へ向けて戻ることにする。
安曇野から湧き上がる雲。
今朝歩いた道なので帰りは楽だ。お花畑を歩き、最後の難関の蝶槍への登りも楽にこなし、蝶槍のピークは巻いて行く。今朝出会った雷鳥の家族が蝶槍付近まで来ていた。
雷鳥の家族。
蝶ヶ岳まではのどかな散歩道が続く。テントへは戻らず、小屋の前のベンチで店を広げて生ビールで乾杯する。その内にテレビ信州の「リレー縦走」という生番組が始まった。蝶ヶ岳山荘のオーナーがインタビューを受けている。北アルプスで唯一の女性オーナーだそうだ。
番組が一段落した所で、テントへ夕食の材料を取りに行った。今日はこのベンチで夕食にする。ビビンバができ食べている所で再びインタビューが始まった。まだ番組は終わっていなかったようだ。私が「東京からです」と答えて番組は終わった。そして夕食も終わった。
今晩は有るものを全部しっかり着て万全に備えたが、あまり寒くならなかった。その代わり、深夜から音を立てて雨が降り出した。ゆっくり寝て、朝食を済ます頃には周りのテントはほとんど居なくなっていた。テントの中でパッキングをして、雨具を着て、テントを撤収する。今日は長かべ山を経由して徳沢へ下る。霧の中を蝶ヶ岳の頂上を経由して、緩やかなハイマツの尾根を下る。やがて水の無い小さな池があり、そこからお花畑が始まる。
長塀尾根のお花畑。
雨の中、お花畑の中を花の写真を撮りながらゆっくり下るとコオニユリの群生があり、妖精の池にでる。お花畑は妖精の池でほぼ終了した。
妖精の池。
所々二重山稜になっている尾根の樹林の中の緩い登下降を繰り返し長塀山に着いた。
長塀山にて。
長塀山を過ぎると本格的な下りになる。道は良く整備されているが、所々崩れていて歩きづらい箇所もある。雨はしだいに小降りになってきた。単調な下りを淡々と下って行く。
樹間から白い梓川の河原が見えるようになり、川の音が聞こえるようになったが、なかなか徳沢に着かない。この頃から、あと何キロという道標が増えてきた。やっと徳沢小屋の屋根が見え、徳沢に着いた。徳沢に着くと雨は止み、ベンチで一休みする。徳沢はこれから山に向かう人と下山者で賑わっている。雨具を脱ぎ、泥だらけの靴を川で洗い、腹ごしらえをして上高地に向かう。
時々小雨が降る中を傘をさして歩く。今日は前穂高岳も明神岳も見えない。明神を過ぎると観光の人がドッと増える。歩いているとNDS合宿隊の横山さんから携帯に電話が入った。車で沢渡へ向かっているとのこと。上高地で合流するのは難しそうだ。今日の上高地は展望が無く寂しいが、それでも大勢の人で賑わっていた。
上高地側から蝶ヶ岳に登るには徳沢からのルートと横尾からのルートがある。横尾からのルートは急登が続き効率的に登れ、徳沢からの長塀尾根は上部がお花畑で楽しい。
8月5日 | 標高 | 到着 | 出発 |
原村 | 1260 | − | 4:57 |
沢渡 | 1035 | 6:11 | 6:17 |
上高地 | 1520 | 6:36 | 7:10 |
明神 | 1550 | 7:51 | 8:09 |
徳沢 | 1585 | 9:01 | 9:14 |
横尾 | 1640 | 10:16 | 10:46 |
一本 | 1930 | 11:36 | 11:45 |
一本 | 2085 | 12:13 | 12:22 |
一本 | 2290 | 13:10 | 13:18 |
稜線 | 2625 | 14:18 | 14:42 |
蝶ヶ岳 | 2677 | 15:17 | − |
8月6日 | 標高 | 到着 | 出発 |
蝶ヶ岳 | 2677 | − | 7:00 |
ピーク | 2592 | 8:44 | 8:53 |
ピーク | 2512 | 9:26 | 9:54 |
一本 | 2585 | 10:35 | 10:55 |
ピーク | 2512 | 11:48 | 12:39 |
ピーク | 2592 | 13:16 | − |
蝶槍手前のコル | 2470 | 13:52 | 14:01 |
一本 | 2660 | 14:44 | 14:53 |
蝶ヶ岳 | 2677 | 15:34 | − |
8月7日 | 標高 | 到着 | 出発 |
蝶ヶ岳 | 2677 | − | 8:19 |
長かべ山 | 2565 | 9:17 | 9:23 |
一本 | 2075 | 10:54 | 11:01 |
徳沢 | 1585 | 12:30 | 13:11 |
明神 | 1550 | 14:00 | − |
上高地 | 1520 | 14:42 | 15:00 |
沢渡 | 1035 | 15:32 | 15:40 |