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制憲議会選挙のその後−2
2008年5月7日

 大騒ぎの選挙も終わりカトマンズは結果の意外さに驚き、虚脱感におそわれている。

 選挙結果の発表から旬日後の政界の動きを羅列的に並べてみた。 依然として政治スケジュールは決まっていないが、来るべき議会に向けて次期政権を担うことになるマオイスト派をはじめ各政党がどのような争点、懸案を持っていおるのか。報告する。

1.新政権の構成
1) マオイスト派単独
2) 左翼連合
3) 今回の選挙で議席を得た全政党の連立による大政翼賛会
現在マオイスト派主導により全政党参加の交渉が進められいますが、共産党統一派は反マオイスト運動を議会内、街頭で行うことを5月5日の執行委員会で決定しました。
 
2. 国体(元首と政府執行機関)
1) 象徴大統領、首相政府
2) 大統領制(権力集中 アメリカ型)
3) 首相制(大統領をおかず首相に元首、権力集中)
マオイスト派はコイララ首相を大統領に置き、防波堤を作って首相(プラチャンドラ)に権力集中を考えているようです。
 
3. 軍関係
1) NAを国軍とする(PLAを解体する)
2) PLAを国軍とする(NAを解体する)
3) NAとPLAを合体する。
全政党が武器を持った政党の軍(マオイスト武装部隊)解散が先決との意見。
 
4.武器の放棄か管理
1) マオイスト派の武器はUNMINにて管理されていますが7月22日で任期の切れる国連監視団が任期延長を出来ない場合の管理
マオイスト派は国連の任期延長に否定的です。自分達で管理すると言っていますが。
政党のほとんどは武器を持っている政党とは連合できないと。
 
5.YCL(Young communist League) 問題
YCLはマオイスト派の青年部といった組織ですが各政党が現在最も問題にしているのがYCLです。
マオイスト派は絶対に解体しないし、むしろ強化する 意向。
マオイスト派はコングレス、共産党の青年組織の解体を要求している。
共産党は現在進行中の執行委員会でYCLへの反撃のため全国規模の街頭運動起こす事を決定。
YCが解決されないかぎり連立としての新政権立は難しい状況 。
 
6.王制と共和制
1) 共和制の宣言に至るまでの手続き
2) 王制から共和制への手続き
3) 国王およびロイヤル・ファミリーの処遇
 
7.MPRFを先頭とするマデシ・グループ の問題
 
8.新憲法の起草のための委員会の設置
 
などですが、マオイスト派は単独での政権作り、維持は難しいとの判断にたっているようで各政党への懐柔策にでています。しかしながら、武力(軍)を持った政党への恐怖と不信感から、全政党が連立を取り敢えず否定している。

首相の解任に三分の二の賛成が必要というのは、暫定政権のミステークとコングレスの読み違いですが、もともと暫定政権は超法規的に成立したものですからこの三分の二も各政党との話し合いで(超法規的に)簡単に削除されます。まずこれを解決しないとコイララ首相を辞任させる 事が出来ません。しかしコイララ首相が"俺,やめない”と言ったらどうするのでしょうか。
憲法制定の問題ですが三分の二というのは前述のように大した問題ではありません。理屈や政党の戦術上では単純過半数と三分の二が取引のカードでありますが、なんといっても暫定政権での決め事ですから。

マオイスト派が連立政権に持ち込みたいのは事実ですが、各政党が連立を受け入れる条件である、
1) PLA を解体すること。
2) YCLを解体すること。
3) 武器とPLAを解体しないならUNMINの指揮下におくこと。
4) 市場原理主義、各種の自由(表現、結社など)を正式に党是として国民に保証すること。
などを他党に提案しない限り連立は難しいでしょう。
ただし、マオイスト派が”アメ”を上手に使いわけることができれば、つまり大幅な妥協ができれば若干話が違ってきます。既にマオイスト派は各党にアメ(大臣)のオファーをしております。
また、マオイスト派が過半数などを確保してない事はこれも、たいした問題ではありません。601議席中225議席というのは圧勝でコングレス、共産党、MPRF等大手を合計してもマオイスト派の数にはなりません。マオイスト派対全その他の政党と考えるから錯覚しますがコングレス、共産党対マオイスト派とその他の全政党連合も考えられます。
重要なのは第一党 なることです。"アメ”を持つことです。もし、225議席をもつマオイスト派が政権をコングレス等に譲り野党に回ったらどうなりますか。どえらい政党に議会内でのキャステイング・ボードを握られる事になります。

どうやって、共和制を宣言するのか見物です。ネパール人(政治家)に 聞いてもてもわかりません。なんせ初めてのことですから!

国王の処遇はどうするのでしょうか、実際230年以上続いた王制ですがギャネンドラ国王が、"はい、そうですか、了解”とほんとに言うのでしょうか。
これが武力による革命でしたらkick-outで済まされますが議会で平和的に手続した場合どのようになるのか。国軍を動かすのは難しいでしょう。
まさか"俺王様辞めない”と言ったら? 余計な事ですが、王宮は誰が使うのでしょうか?まさか!あの人が!
数日前ナンシーアメリカ大使がプラチャンダ議長と会談しましたが、アメリカはテロリスト・リストからはずす意向でしょうか。詳しくはわかりませんが、相当の譲歩をマオイストは強いられているはずです。
既に、インド、中国などは承認するようですが、日本政府の意向は不明です。ただしヨーロッパ各国は承認するための調査ミッションをネパールに送ってきています。

最後になりますが選挙でのマオイスト派の勝利の原因は
1. 国王が余りにも人気がなかったこと(国王及びその関係者以外なら誰でもいい)
2. コイララ首相と7政党が優柔不断でマオイスト派にあまりにも多くの譲歩をしたこと。
3. これは決定的ですが、言われているようにマオイスト派がYCLを使って大掛かりに脅し、傷害などあらゆる手を尽くして活動した事。
4. コングレスと共産党の活動不足(両党とも当然勝つものとして選挙運動をした候補者は多くありません、ある新聞社の話しによれば両党とも次期政権の組閣構想を話しあっていたそうです、選挙期間中にデオバは次の首相は私だと宣言したぐらいですから)

 マオイスト派の政策が理解されたとか、選挙は平和的に公平に行われたというのはマオイスト派を含めて誰も信じていません。信じているのは・・・、思い当たりません。

 ただし、選挙は勝てば官軍です。今頃になって、”たら、れば” などと言っても手遅れでマオイスト派は簡単に政権を手離しませんし、未だ政権について政策を実行しているわけでもありませんのでその良し悪し等の論評は控えるべき でしょう。取り敢えずネパール国民の選んだ道ですから尊重しなければならないとは考えます。



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