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カトマンズ盆地の水道はどんな現状か! (その−1)
2008年2月17日

(1.)  力トマンズ水道の現状

 ネパール国の首都カトマンズは、隣接するラリトプール、キルテイプール及びバクタプールと一体となり、カトマンズ盆地の都市部を形成しており、同国の政治経済の中心地として、近年、急激に人口が増加し、産業も発展している。1991年の国勢調査結果によると、都市部の人口は59.8万人であつたが、1997年の調査では74.9万人に増加している。この人口増加傾向が現在も続いているものとすれば、2005年の調査では200万人を超えていると推定される。

 カトマンズ盆地の都市部は、この急激な人口増加や都市化の進展により、インフラ整備や環境対策が追いつかず、深刻な都市環境の悪化を招いている。特に、市民生活の安定や都市活動を維持するための重要施設である水道は、既存施設の老朽化や新規施設の建設の遅れにより、安全で衛生的な水を必要量確保できず、慢性的な水不足と水質障害に悩まされている。このため、カトマンズ盆地内の住民は、劣悪な衛生環境と不自由な生活を強いられており、ネパール国政府は、カトマンズ盆地内の給水サービスの改善を緊急に実施する必要に迫られている。

 カトマンズ盆地内の上記都市部の給水は、NWSC(Nepal Water Supply Corporation 水道公社)が管轄していたが、現在は昨年の組織等の変更からKUKL(Kathmandu Upatyeka Khanepani Ltd)が、同都市部への7系統の給水システムを受け持っている。その給水能力は、約113千m3/日である。

 これら既存給水システムの水源は、盆地内の河川水(湧水8を含む)と地下水(深井戸)である。しかしながら、河川水は、乾期の後半に著しい流量の減少を生じること、盆地内の河川はその地形条件から、いずれも小河川であるため、年間を通じて安定的に取水することが困難な状況にある。地下水は、主にこの乾期の河川流量の減少を補完する水源として利用されているが、高濃度の鉄やアンモニア性窒素を含有しているため、水質障害を発生させる原因となつている。

 各水源から取水された原水は、給水システム内にある8ヵ所の浄水場で処理されているが、既存浄水場の多くは建設後30年以上経過しており、老朽化や施設の不備により、適正な水処理ができない状況にある。市内への配水は、各給水システム内の配水池から自然流下によつて行われているが、給水量の不足から二日に一時間程度の時間給水が恒常化している。

 また、市内の配水管網は人口増加や配水区域の拡大に伴つて順次拡張されてきたが、水理的な検討がされることなく、無計画に延長されてきたため、所要の給水圧が確保できず、配水管網の末端や高位部では、出水不良や断水の原因となっている。さらに、配水管網は、総延長約500 k mの内、約30%は管齢20〜80年の老朽管であること、20年以下の配管についても施工や配管材料の不良等により、漏水率が40%にも達しており、給水量の不足を一層深刻なものにしている。

 現在、KUKLが管理する給水栓は、各戸給水栓が約1098万栓、公共水栓が1,270ヵ所である。各戸給水栓は、毎年3〜 4千栓ずつ増加しているため、今後、新規の施設による給水量の増加がなければ、急激な人口増加に伴って、給水状況は年ごとに悪化することになる。さらに、配水管網の不備により、給水の公平な配分ができないため、給水の地域的格差がさらに広がり、住民の水道に対する不満を増長することになる。

 旧NWSCは、水道事業の慢性的な赤字体質を改善するため、ここ5年間に水道料金を約4倍に値上げしたが、この間になんら給水サービスの改善のない地域の住民にとつて、水道に対する不満や不公平感は根強いものがある。水道事業の円滑な運営にとつて、住民の協力や理解は不可欠であり、給水サービスの改善に係るプロジェクトが遅延なく実施されることが望まれる。

(2) 給水量

 カトマンズ都市部に給水している各給水システムの給水能力、配水量及び給水量の実績調査(旧NWSCの水道メーター台帳調べ)を基に推定されたカトマンズの給水量の状況は、現在の家庭用原単位は、一人当たり1日約47リットルに留まつている。

(3). 給水サービス

 JICAは2000年に実施した「カトマンズ上水施設改善計画基本設計調査」において、現状の給水サービスに対する住民の満足度の現状を把握するため、旧NWSCが管轄する盆地内8支所(料金所)でアンケート調査を実施した。調査方法は、各支所に調査員を配置し、水道料金を支払いに来る住民に対して、給水状況を質問した後、給水状況に不満を持つ住民に対してはヽ次に何に対して不満なのかを質問する方法が採用され、総サンプル数は、17,303件であつた。

(4) 水質

 旧NWSCの中央水質分析所が実施している市内給水栓の水質分析結果(過去3年分)の概要は、給水水質として適切なもの(飲用適十飲用可)は、全体の50〜55%に留まつている。また、生物学的な汚染が疑われる割合も約14%もあり、水道水の安全性の面で重大な問題がある。



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