ウルップソウを求めて

八ヶ岳 横岳   2829m
よこだけ




2003年6月27日〜29日

6月27日 多摩=原村
6月28日 原村=美濃戸〜赤岳鉱泉
6月29日 赤岳鉱泉〜行者小屋〜赤岳展望荘〜横岳〜硫黄岳〜赤岩の頭〜赤岳鉱泉〜美濃戸=多摩

梅雨のさなか、ウルップソウなどの高山植物を見に八ヶ岳の花の宝庫、横岳を歩きました。また、険しい横岳のルートを使って岩稜歩きの講習もしました。


6月27日

夜8時に多摩を出発し、中央高速を順調に進み10時過ぎに原村に到着した。今日は一日天気が良かったが、原村の家に着くと同時に雨が降り出した。天気予報では明日は一日中雨で、日曜日は晴れるとの事だ。

6月28日

朝、7時に起床した。昨夜ほどの本降りではないが、相変わらずの雨もようである。今日は赤岳鉱泉までなので食後ゆっくりして、9時半ごろ出発した。美濃戸口で山行計画書を提出し、美濃戸まで車で入る。赤岳山荘の駐車場に車を止め、美濃戸山荘で一休みする。美濃戸山荘の北原一三さんに花の話を伺おうと思ったが、今日は展望荘へ上がっているとのこと。

しとしと雨の中、北沢の林道を行く。急ぐ理由も無いので、道端の花を見ながらのんびりと歩く。堰堤を過ぎると沢沿いの山道になる。いくつかの橋を渡り、樹林の中を歩くようになると赤岳鉱泉は近い。



小雨の林道を赤岳鉱泉へ向けて歩く。




道端に咲くゴゼンタチバナの花。




柳川北沢に沿って歩く。


1時半に赤岳鉱泉に着くと同時に雨が止んだ。小屋で幕場代を支払い、早速テントを張る。既に一張り張ってあるが、どこでも好きな所に張れるのでかえって場所の選定に迷ってしまう。



赤岳鉱泉に到着。




テントを設営するころには雨が止んだ。


まだ早いので、テントの中でロープの結び方の講習をして時を過ごす。4時過ぎに、持って来た少しのお酒を飲みながら夕食の支度を始めた。外は雨でもテントの中は快適だ。トイレも洋式水洗で非常に快適である。まだ外は少し明るいが7時前に寝ることにする。

6月29日

なかなか寝付けなかったが3時の目覚ましで目を覚ました。昨夜はガスに覆われていたが、今朝は星空だ。朝食を済ませ、コーヒーを飲んで5時過ぎに赤岳鉱泉を出発した。正面に見える赤岳と阿弥陀岳が朝日に輝いている。

中山乗越への登りをゆっくり歩く。道端の花がしだいに気になってくる。中山乗越を越えると赤岳が迫ってくる。行者小屋で一休みしてハーネスを着けて地蔵尾根を登る。しばらく登ると樹林が開け、左手に横岳の厳しい稜線が見え元気が出る。



これから登る地蔵尾根と赤岳展望荘を望む。


所々にあるコイワカガミの群生に感激しながら登って行くと、最初の鎖場に到着した。ここは細い鎖にカラビナをかけてフェラータで登る。



地蔵尾根に群生するコイワカガミ。


しばらく樹林の急登が続き、岩峰右の階段に出る。慎重に鉄の階段を登ると再び鎖の登りになる。再度フェラータで登るが、鎖が太いのでカラビナのセットが難しい。鎖場を越えると右のルンゼの木橋のトラバース状の登りになり、これを越えると次は左のルンゼの上の岩場をトラバースする。冬は細いトラバースだったが、雪が無いと鎖もあり楽なトラバースだ。後は細い岩稜を鎖を頼りに登り地蔵の頭に到着した。



フェラータで鎖場を安全に通過する。




行者小屋を眼下に登る。




だんだん調子が出てきた。




もうすぐ稜線。




地蔵仏に無事に到着。


近くの赤岳展望荘で一休みする。入口の近くにいた北原一三さんにお願いして、小屋の入口でツーショットの写真を撮らせていただく。今日は八ヶ岳ガイド組合の北原一三さんが書かれた「花の山旅・八ヶ岳」の本が大活躍する事になる。小屋の脇でウルップソウやヤツガタケキスミレなどを見る事ができた。



赤岳展望荘に咲くウルップソウとイワベンケイ。




北原一三さんにサインをもらって。


お茶をいただき、北原一三さんにお礼を言って横岳へ向けて出発する。小さな二十三夜峰岩峰を過ぎ、日ノ岳の登りになる。ここの鎖場はさほどの危険は無いので鎖を頼りに登る。登るにつれて色々な花が見つかり、なかなか前に進めない。日ノ岳の手前でカメラの電池が切れたので一休みする。北原さんの本を出して花の勉強会が始まった。



日ノ岳手前の岩場に咲くイワベンケイ。


小さなハシゴや鎖を越え日ノ岳に到着する。右手に鉾岳が聳えている。日ノ岳のお花畑を左に見て先に進む。次の鉾岳は左に諏訪側を巻く。ここでロープを出し、三人ロープでつなぎ、ショートロープで行く事にする。早速、昨夜習った八の字結びで結んでもらう。少しもたついたが何とか合格だ。いったん諏訪側へ下り、トラバースして稜線に登り返す。冬は緊張する所だ。金子さんには初めてのショートロープだが、うまくこなして難無く通過した。鉾岳と石尊峰のコルに出る。



日ノ岳の鎖場を登る。




稜線に多く咲くオヤマノエンドウ。




日ノ岳山頂付近のお花畑。




ミヤマシオガマも目立つ。


ここから先は奥の院まで難所は無く花の稜線漫歩になる。金子さんが「ウルップソウが無いね」と言ったら、ちょうど良いタイミングでウルプソウが現れたりして、花を楽しみながらゆったりと歩き、石尊峰で一休みする。振り返ると赤岳が迫力ある姿で聳えており、その後方に北岳などの南アルプスの山々を望むことができる。昨日とは打って変わった好天に感謝。



石尊峰の頂上にて。後方は赤岳、北岳は雲の上。




キバナシャクナゲの花。




ウルップソウの群生。


花の稜線漫歩は続く。三叉峰は杣添尾根のある佐久側を巻く。正面に横岳の最後方の奥の院が近づいてきた。小さな岩峰に二段のハシゴがかかている。このハシゴを越えると横岳奥の院の頂上に着く。



横岳山頂、奥の院にて。


奥の院からの下りが今日最後の難所である。再びロープを出してショートロープで通過する事にする。高度感のある細い岩稜を鎖を頼りに下り、右にハシゴで佐久側へ下る。鎖に導かれてトラバースし、冬ルートのハシゴを左に見送ると、岩の窓があり鎖に導かれて諏訪側に下る。トラバースの後、再び佐久側を稜線通しに下ると難所は終了する。ここでロープとハーネスを外す。

左に大同心の頭が天空の城のように浮かんでいる。正面に硫黄岳が聳え、足元には可憐な花が咲き、とても気持ちの良い下りだ。まだ少し早いがコマクサの花が多く見られるようになった。緑のロープで囲まれた道を下りコルの硫黄岳山荘に到着し、一休みする。



天空に浮かぶ大同心の頭。




硫黄岳小屋に近づくにつれコマクサが増える。


硫黄岳への登りは短いが、横岳を越えて来た体には、意外ときつい。しかし、横岳を越えて来た達成感から、山頂付近からの横岳、赤岳、阿弥陀岳の眺めは感動的である。硫黄岳の頂上でしばらく山を眺めて時を過ごす。



硫黄岳手前からの横岳、赤岳のパノラマ。




硫黄岳山頂にて。


硫黄岳の下りは初めは岩ぽいが、すぐにザレた道になる。白い赤岩の頭との鞍部で雄大な南八ヶ岳の眺めを脳裏にきざみ、赤岳鉱泉へ向けて一気に下る。長い樹林の中の下りだ。ここにはカニコウモリの群生もある。沢の音が近づいてくると赤岳鉱泉は近い。突然、頭上の樹林が切れ、大同心の岩峰が頭上に聳える。ここは赤岳、阿弥陀岳の眺めも良い場所だ。



硫黄岳下りのツガザクラ。


すぐにジョウゴ沢の分岐に降り立つ。ここからは樹林の中の水平な道になる。いくつかの小沢を渡り、緩い下りを行き赤岳鉱泉に到着した。長かったが充実した周遊ルートだった。

早速テントをたたみ、パッキングをすませる。重くなったリュックを担いで、昨日登って来た北沢の道を下る。樹林を抜け、展望の良い岩の所で振り返り横岳の姿に別れを告げる。あの稜線を歩いたのだと思うと感動的だ。



横岳よサラバ、また来る日まで。


堰堤で一休みして林道歩きが始まる。そろそろ林道歩きもいやになるころ美濃戸に到着した。赤岳山荘の駐車場で、山靴と荷物から解放され、シャツを着替え無事の下山を感謝する。帰路は中央高速の大渋滞に巻き込まれたが、8時半に帰宅する事ができた。

地蔵尾根の登り、横岳の通過とも見た目ほど危険ではないが、ポイントを押さえた慎重な行動が要求される。

6月28日 標高 到着 出発
原村 9:35
美濃戸 1715 9:57 10:40
堰堤手前 1950 11:34 11:44
北沢左岸 2105 12:33 12:46
赤岳鉱泉 2220 13:26
6月29日 標高 到着 出発
赤岳鉱泉 2220 5:16
行者小屋 2345 5:57 6:09
地蔵仏 2700 7:38
赤岳展望荘 2715 7:45 8:21
日ノ岳手前 2725 8:54 9:12
石尊峰 2795 9:58 10:17
奥の院 2829 10:47 10:55
硫黄岳山荘 2650 11:43 11:58
硫黄岳 2750 12:27 12:55
赤岩ノ頭 2640 13:03
赤岳鉱泉 2220 14:12 14:52
堰堤 1950 15:53 16:00
美濃戸 1715 16:50 17:00
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