渋の湯から

八ヶ岳  中山   2496m
なかやま


2000年6月10日

北八ヶ岳と南八ヶ岳の中間点

渋の湯〜黒百合平〜中山〜高見石〜渋の湯

入梅前に一度八ヶ岳へ行こうと思っていたのですが、やっとギリギリになって行くことができました。妻といっしょだったので例によって遅い出発になり日没ギリギリの行動になってしまいましたたが、運良く雨にあわずに歩くことができました。


今日の八ヶ岳の朝は雨もようで、何となく気分が乗らない。ゆっくりと朝食をとりコーヒーを飲みながらテレビの天気予報を見る。どうやら入梅してしまったようだ。山支度をして原村の家を出発した頃には10時を回っていた。昨夜の雨はあがり、何とか天気はもちそうだ。

三井の森を抜けて渋の湯へ向かう。渋の湯までの道は一部狭い所もあるが、二車線の立派な道になっている。一番奥の温泉宿の渋御殿湯に駐車料金を払い、駐車場へ車を止める。駐車場の脇には公衆トイレも完備している。ちなみに駐車料金は一日千円、入浴料金は一人八百円である。そうこうしている内に、茅野からのバスが一人の登山者を乗せて到着した。

駐車場から橋を渡り、宿の前を通って川沿いに進むともう一軒宿があり、その上先に橋がある。この橋を渡り、少し登った所に高見石と黒百合平の分岐がある。今日は右へ黒百合平へ向かう。


橋を渡り登山道に取り付く。

しばらくは苔むした樹林の斜面の登りが続く。このあたりは大きな石がごろごろしており、時々倒木もある。見晴らしも無く、あまり歩きやすい道ではないがシラビソの林と周辺の苔を眺めながらひたすら登る。


樹林の中の登りが続く。

時々左手に高見石方面が望める。樹林の間に大きな石が無数にころがっている。登山口から50分ほど登ってやっと八方台との分岐に着いた。この分岐から天狗岳が少し見えた。今日は暑くないのであまり汗も出ず、快適だ。


八方台との分岐から天狗岳を望む。

分岐からはしばらく稜線通しの緩やかな登りになる。樹林の高さも低くなり、気持ちの良い登りだ。20分程歩くと下りになる。少し下った所に沢が流れており、ここで唐沢鉱泉からの道を合わせる。10名程の学生らしいパーティーが休憩していた。

ここからは沢沿いの登りになる。しばらくは沢の音を右手に聞いていたが、小さな橋を渡ると沢の中に登山道がつけられている。正子は濡れた石に、こわごわ乗りゆっくり登ってゆく。周りの樹林の中には、まだ雪が残っているのが見える。


沢の登山道の中を登る。

右手の樹林の間から天狗岳下部の石だらけの斜面が見えるようになると黒百合平は近い。沢の水が細くなり、前方の樹林の間から突然、山小屋が現れた。やっと黒百合平に着いた。幕場には南張りかのテントが張ってあり、賑わっている。小屋の前のベンチに荷物を下ろし、昼食の支度を始める。


黒百合平に着いた。

長袖のフリースを着たが、だんだん寒く感じてくる。小屋の温度計は10度を示している。温かいラーメンがとてもおいしく感じた。時間の都合でコーヒーは割愛し、中山峠目指して出発する。

中山峠までは、ちょっとした湿原になっており、木道の上を歩く。右手には東天狗、西天狗の二つの天狗岳が見えるはずだが、今日は霧に隠れて見えない。上空ではヒューと風の音が寒そうだ。中山峠は樹林の中にある。右へ行くと天狗岳、左に行くと中山である。峠で防寒の支度をして左に中山へ向けて登る。


中山峠にて。

中山峠から少し登ると右手の火口壁が切れ落ちていて要注意だ。右手には稲子岳の南壁が望める。途中「にゅう」への分岐があり、さらに登ると樹林が切れ、ハイ松に石がゴロゴロのアルペン的な登りになる。気持ちの良い登りで、私は好きだが、石の苦手な正子は難渋している。右手に「にゅう」の小さなピークが望める。


中山への登り。

「にゅう」を眺めて少し登り樹林帯に入ると中山の頂上がある。小さな標識があり、高見石側からの登山者に写真を撮ってもらう。


中山の山頂にて。

中山から高見石への下りは北斜面なのでまだかなりの雪が残っている。傾斜も緩いので楽しく雪道を歩くことができる。


中山北面の残雪の下り。

雪の斜面を20分ほど下ると岩がゴロゴロした見晴らしの良い場所がある。ここで道は右に曲がり再び樹林の中を下る。斜度はやや急になり、泥のついた石がゴロゴロしており滑りやすい。おまけに硬く凍った雪が所々に残っており、なかなか気の抜けないところだ。石歩きの苦手な正子は慎重に下っているのでなかなか先に進まない。

長い中山の下りが終わり、右の樹林の間から高見石が見えた。少し登り返すと高見石の小屋に着く。中山の頂上から1時間半かかってしまった。小屋の周辺には登山者の姿は無く、静まりかえっている。それもそのはず、もう4時半を過ぎている。ここから渋の湯まで1時間の下りだが、日没までに着けるだろうか。

高見石から丸山へ向けて少し行くと道は二股になり、ここを左に行く。しばらく樹林の中のだらだらの下りが続く。樹林が切れ、急な斜面を一段下ると岩がゴロゴロ重なっている賽の河原に着く。岩の上をバランスよく歩けば何でもないのだが、慎重に岩を下ってゆくと恐ろしく時間がかかる。


高見石からの賽の河原の下り。

賽の河原には岩に目印がつけてあり、標識もあるので視界が良ければ特に問題は無いが、霧が出てきたらルートファインディングが難しいだろう。天気が悪い時には避けた方がよい。ともかく、我々は時間をかけてゆっくり下る。所々に群生しているイワカガミの花が目を楽しませてくれる。時々岩の下から水が流れる音が聞こえ、沢の上であることがわかる。


賽の河原に群生するイワカガミの花。

賽の河原の下のはずれに賽の河原地蔵尊という大きな地蔵がある。碑によると藩の不当裁定に異議をとなえ1678年に処刑され小松三郎左衛門のために建立したものだそうだ。やがて樹林に入り沢沿いの道になるが相変わらず岩が多く進みは悪い。

右に増水時の巻き道を分け、左に下り橋を渡る。さらに沢沿いに下ると今度は右に沢を渡り返す。ここには橋は無く、沢の中の岩を伝って渡る。増水した時には渡るのは困難である。さらに下り再び左に橋を渡ると道は広く平坦になった。左の枝沢の橋を二つ越え、崩壊地を少し高巻くと温泉のにおいがしてきた。渋の湯は近い。まだ明るかったが、渋の湯の駐車場に着いたのは7時直前であった。コースタイムの二倍の時間をかけてしまった。

黒百合平への登り、賽の河原の下りとも沢沿いの区間があり、悪天候の時、大雨の後などは避けた方が無難である。

場所 高度(m) 到着 出発
渋の湯 1850 11:15
八方台分岐 2120 12:08 12:21
唐沢鉱泉分岐 2175 12:46
黒百合平 2385 13:45 14:30
中山峠 2405 14:40 14:45
中山 2496 15:05 15:08
高見石 2270 16:38 16:40
渋の湯 1850 18:58


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